手軽に利用できる自己破産
日本の場合は総人件費の削減ありきで、そのための手段として成果主義を行っている。
日本の企業が現在行っている成果主義は、能力あるものを評価するというよりも、総賃金額を低く抑える手段にしかすぎない。
安易な成果主義は競争力の源泉である人材のやる気を著しく削ぎ落とす。
有能な人材がいなくなり、社内に混乱を引き起こし、企業の競争力を削いでいく。
日本経済の屋台骨を支えてきたのは、リストラの渦中にある中高年世代である。
会社のために滅私奉公してきたのは、生活を支えるためだけではなかった。
仕事を通じて自己実現を図り、組織の一員として認知されることが、サラリーマンの働きがいだったのだ。
大部分の人たちは生活のために、学校卒業と同時に会社に入ってサラリーマン・サラリーウーマンとして働くことになる。
企業は、一般の人にとって人生のセーフティーネットなのである。
日本人は共同体のなかで役割を担い、貢献することで、自分の存在価値を他人に認められる。
日本には欧米のような絶対的な神が存在しない。
宗教の存在しない社会を確立させるには、組織活動を通じて自己実現を図っていかなければならない。
日本人にとって会社とは、生活の手段であると同時に、自己を確立する場所なのである。
人材マネジメントの重要な役割として、価値観の共有がある。
人事政策は企業の価値観を従業員に伝えるメッセージである。
働く側が価値観を共有できてこそ、企業の成功が自身の成功につながっていく。
そのためには、働く側の価値観を反映できる人材マネジメントが必要となる。
日本人の価値観を反映できない人事制度は、うまく機能しない。
現在の成果主義が日本企業で機能しないのは、日本人の価値観を反映していないからである。
終身雇用や年功序列が日本企業に根づいたのは、高度成長期という経済環境もあるが、それが日本人の価値観に合っていたからだ。
価値観はその国固有の歴史や文化を反映する。
成果主義が欧米の企業に根づいたのは、それが欧米人の価値観を反映していたからである。
武士道と騎士道の違いを例に挙げてみよう。
武士道と騎士道も共に封建制という時代において忠義や礼節を重んじるところで共通する特質があるが、決定的な違いがある。
武士道は一人の君主に対する忠誠であり、自己犠牲で欧米の社会契約を分析する一方、騎士道は、キリスト教に基づく敬愛精神であり、自身の名誉のために戦う個人主義である。
武士道における君主の存在を会社に置き換えれば、終身雇用と年功序列の源が見えてくる。
一方、キリスト教のベースとなる神との「契約」という個人主義の価値観が成果主義の源である()。
経済環境や社会環境が変われば、人事政策も環境に合わせて進化させていかなければならない。
日本的経営が新しい経済環境下で機能しなくなったのならば、新しい人材マネジメントをつくっていかなければならない。
グローバル化の経済環境下では、市場に出回った差別化された技術やサービスが標準化する前に、絶えず独自の改善を続けていき、「差別化し続けられる」プロセスをつくっていくしかない。
差別化をつくるのは人材である。
企業独自の差別化を継続できるプロセスこそが、新しい経済状況下に求められることである。
そのプロセスを人材マネジメントにできるク進化した日本的経営。
が必要なのである。
そのためには、価値観を共有し、自己実現を可能にしながら、人材価値を高め続ける。
コミットメント型人材マネジメント。
が必要なのである。
それによって、企業と従業員が、相互信頼を築いていける制度をつくっていくべきだ。
失われつつある社会契約を再構築することで、元気な日本社会をつくっていけるのだ。
おわりに日本的経営に代わる新しい社会契約投資の対象がモノからカネに代わり、これからはヒトになっていく。
なぜならば、人材価値こそがこれからの時代の唯一の差別化要因だからである。
競争力を保ち続けるためには、企業は人材価値を高め続けるシステムを生み出し続け、働く側の多様化する価値観を受け入れ、長期間働ける雇用環境を提供していかなければならない。
これまでのサラリーマンは、会社で仕事を評価され、会社人間として自己実現を図ってきた。
ただし、その生き方は自分で選んだというよりも、会社によって与えられた生き方だった。
会社が求めていたのはプロフェッショナルな人材よりも、会社に忠誠を尽くすゼネラリストだった。
会社は従業員の生活を保障し、従業員は会社に生涯の忠誠を誓う。
この暗黙の社会契約が、高度経済成長期における日本企業の競争力の源泉であった。
経済環境の変化により、日本的経営は機能しなくなった。
そのため、暗黙の社会契約は企業から一方的に破棄されてしまった。
リストラと成果主義によって多くの人たちは会社での自己実現の機会を失い、それによって社会不安が増し、格差社会が広がっていった。
企業と従業員を結ぶ紳が切れてしまったのだ。
働く側は、会社に人生を託すより、生活のバランスを考えて仕事を選び、自己実現のために職業を選択するようになった。
職業の選択は生き方の選択である。
職業から得られる収入によって生活レベルも決まってくる。
しかしそれ以上に、仕事を通じて、自分がどのようにありたいかを選択することなのである。
仕事を通じて自己実現を図ることにより、職業に対するノープレス・オブレージが自然と芽生えてくる。
その意識は、プロフェッショナルな人材へとつながり、高度な専門性を身につけながら、倫理観の高い人材像を目指して自己改革を行っていく。
プロフェッショナルな人材こそが、企業の競争力の源泉である。
経営者の役割は、従業員に企業戦略を明示し、優秀な人材を組織化することによって、最高のパフォーマンスを顧客に提供できる組織体をつくり上げることである。
新製品や新サービスを開発し、顧客の満足度を高めていくのは、従業員一人ひとりの能力であり、責任感である。
それらを最大限に引き出し、伸ばすために、企業戦略を従業員と共有し、会社の成功が従業員の成長につながるような人材マネジメントを行わなければならない。
何が企業の競争力を支えているのかを経営者はもう一度考え、「企業戦略の実行」イコール「人材マネジメント」であることを認識すべきだ。
新しい時代の企業と従業員の関係を明確に示すことが、よりよい人材確保につながるのである。
進化した日本的経営による新しい人材マネジメントが強い組織体をつくり上げていく生き方の選択として職業をとらえ、仕事を通じて自己実現を可能にすることが、働く側の新しい価値観になっている。
その価値観を反映した人事制度がコミットメント型人材マネジメントである。
従業員は企業が提供する人材育成によってマーケット・アビリティが高い人材になれる。
企業は、プロフェッショナルな人材が生み出す付加価値によって収益を拡大する。
そのために企業は、能力開発に必要な環境を従業員に与えていく。
企業は従業員の貢献に敬意を払い、従業員は自己実現を与えてくれる場を提供してくれる企業に対して敬意を払う。
お互いが対等な関係を築き上げることで、これまでのサラリーマン文化と異なった。
対等な信頼関係をつくっていけるのである。
対等な信頼関係は、企業と従業員の間に新しい幹をつくっていく。
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